医学論文と著者

  1. Kagase A, Yamamoto M, Shimura T, et al.
    Gender-specific grip strength after transcatheter aortic valve replacement in elderly patients. JACC Cardiovasc Interv 2017. In Press.
  2. Shimura T, Yamamoto M, Kano S, et al.
    Impact of frailty markers on outcomes after transcatheter aortic valve replacement: insights from a Japanese multicenter registry. Ann Cardiothorac Surg2017. In Press.
  3. Kano S, Yamamoto M, Shimura T, et al.
    Gait Speed Can Predict Advanced Clinical Outcomes in Patients Who Undergo Transcatheter Aortic Valve Replacement: Insights From a Japanese Multicenter Registry. Circ Cardiovasc Interv. 2017 Sep;10(9). [Epub ahead of print].
  4. Shimura T, Yamamoto M, Kagase A, et al.
    The incidence, predictive factors and prognosis of acute pulmonary complications after transcatheter aortic valve implantation. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2017 Apr 26. [Epub ahead of print].
  5. Shimura T, Yamamoto M, Kano S, et al.
    Impact of the Clinical Frailty Scale on Outcomes After Transcatheter Aortic Valve Replacement. Circulation. 2017; 135: 2013-2024.
  6. Yamamoto M, Shimura T, Kano S, et al.
    Prognostic Value of Hypoalbuminemia After Transcatheter Aortic Valve Implantation (from the Japanese Multicenter OCEAN-TAVI Registry). Am J Cardiol. 2017; 119: 770-777.
  7. Kodama A, Yamamoto M, Shimura T, et al.
    Comparative data of single versus double proglide vascular preclose technique after percutaneous transfemoral transcatheter aortic valve implantation from the optimized catheter valvular intervention (OCEAN-TAVI) japanese multicenter registry. Catheter Cardiovasc Interv. 2017; 90: E55-E62.
  8. Yamamoto M, Shimura T, Kano S, et al.
    Impact of preparatory coronary protection in patients at high anatomical risk of acute coronary obstruction during transcatheter aortic valve implantation. Int J Cardiol. 2016; 217: 58-63.
  9. Tsunaki T, Yamamoto M, Shimizu K, et al.
    Silent Massive Valsalva Thrombosis Identified on Contrast-Enhanced Multislice Computed Tomography Following Transcatheter Aortic Valve Replacement. JACC Cardiovasc Interv. 2016; 9: 2454-2455.
  10. Koyama Y, Yamamoto M, Okawa Y, et al.
    Left Anterior Descending Coronary Artery Obstruction Associated With an Apical Suture After Transcatheter Aortic Valve Replacement. JACC Cardiovasc Interv. 2016; 9: 499-500.
  11. Shimizu K, Yamamoto M, Koyama Y, et al.
    Usefulness of routine aortic valve calcium score measurement for risk stratification of aortic stenosis and coronary artery disease in patients scheduled cardiac multislice computed tomography. Int J Cardiol Heart Vasc. 2015; 9: 95-99.

論文1 握力(体力低下)から生命予後を考慮する

年齢による体力低下(虚弱度)を評価する項目の中に筋力が含まれていますが、今回はこの筋力を握力で代用してTAVI後患者の予後に与える影響を検討しました。握力の測定は専門的な評価方法を必要としない、外来でも簡便に行えるため、TAVI術後の予後を予測する汎用性の高いマーカーであると思われます。性別により握力の分布が大きく異りますので、男性と女性に分けて比較検討を行ったところ、統計解析にて術後の経過が良くなる群と悪くなる群を分ける数値が、男性26.0㎏、女性12.1㎏と求められました。これらの数値を使用して予後に関して比較検討したところ、全死亡において男女両群で低握力群が高握力群と比較して予後が悪いことが証明されました。一方で、心臓関連死に限定すると予後に有意差を認めませんでしたが、非心臓関連死においては有意差を認めました。握力の強弱は、術後1年の生命予後を規定する因子であり、死因としては性別関係なく、非心臓関連死で顕著となることが分かりました。TAVIの適応を考慮するうえで、握力という指標は有用であり、日常診療において計測する意義は高いのではないでしょうか?

論文3 歩行速度とTAVI後予後

Gait speedは、文字通り患者様の歩行速度について調べた論文です。以前から、歩行速度が遅い患者様は、心臓手術後の回復が遅いことや、予期しない突然死などの可能性が高い事が指摘されていました。今回、TAVI治療後患者の歩行速度が予後に与える影響についても検討したところ、患者様の歩行速度が遅くなるにつれて、予後も悪化することが示されました。歩行速度という日常生活の運動レベルを推し量るものが、非常に簡便かつ有用な検査であることが示せました。今後の課題としては、歩行速度の低い患者さんがTAVIを施行したことにより改善する程度を明らかにすること、改善の乏しい患者様の特徴を明らかにする必要があります。そういった検討を行うことで、TAVI治療における適切な適応判断が可能になることを期待したいです。

論文4 急性期呼吸器合併症

呼吸器疾患を有す患者さんは呼吸器疾患を有さない患者さんに比べてTAVI後の長期予後が悪いことが指摘されております。ただ、術後急性期の呼吸器疾患の増悪に関する報告はありませんでした。我々はこれを急性期呼吸器合併症と命名し、この合併症に関して調べました。その結果、頻度は少ないものの、発症すると約7割の患者さんが1年以内に亡くなられることがわかりました。

そして、以前より呼吸器疾患を有される患者さんに起こりやすいことも分かりました。

今後の課題はこのような合併症を未然に防ぐ方法、及び発症時の対処法の確立が必要と考えます。

論文5 見た目(CFS)とTAVIの関係

CFSは患者さんの活動性を容姿と問診から9つの群に分類するスケールです。TAVIを受けられる患者さんをCFSで9つの群に分類して治療後の予後を検討したところCFSとTAVI後の寿命には有意な相関があることが示されました。外来でも施行可能な簡易評価方法にも関わらず、TAVIの適応および治療後の経過を御理解いただくうえで非常に有用と考えます。

今後の課題としてはCFSで治療後の経過が悪いと予測される患者さんの予後改善のために何を行うべきかはっきりさせることです。

論文6 栄養について

アルブミン濃度は、栄養状態を反映する指標として汎用されております。超高齢者を対象にすることが多いTAVI患者においても、低アルブミン血症(3.5g/dl未満)が予後の規定因子であることが示されました。日常診療で採血することで簡単に測定できる検査値ですので、非常に汎用性の高いマーカーであり、TAVIの適応を考慮するうえで重要な指標となると考えます。

今後の課題としては、TAVIを施行したとしても治療効果の乏しい症例であるのか、治療介入により改善の期待のあるものであるのか?といったものを明らかにする必要があります。多くの議論を積み重ねることで、適切なTAVI患者の適応判断が、より成熟化することが期待されます。

論文7 止血デバイスと合併症、医療経済への貢献

経皮的大腿動脈アプローチTAVI(TF-TAVI)の止血で止血デバイス(Perclose Proglide)を2本使用することが出血合併症予防の点で有効とされている。しかし、止血デバイスの複数使用は術後の穿刺部狭窄や閉塞のリスクもあり、止血デバイス1本による止血も安全面で問題ないとする報告もある。今回我々はOCEAN-TAVIレジストリーから経皮的TF-TAVIを行った全279症例を、止血デバイス1本で止血した群、及び2本で止血した群に分類し、安全性と有効性に関して検討した。血管合併症、出血合併症、及びその他の手技に伴う合併症の定義はVARC-2 criteriaに準じて定義した。止血デバイス成功、アクセス血管合併症は2群間で有意差を認めず、出血合併症に関しても同様であった。30日死亡率は両群間で有意差を認めず、止血不良と死因とは関連しなかった。また、同様の比較試験は患者背景を一致させるプロペンシティー・マッチング処理後にも行われたが、結果に変化は認めなかった。止血デバイス1本での止血成績は2本使用と比較して非劣性であり、医療経済の観点からは1本使用が2本使用に比較して優れる。

論文8 冠動脈保護

冠動脈閉塞はTAVI合併症の一つであり、発症すると患者予後に影響を与える。この合併症を予防する目的で冠動脈保護を行うことがある。しかし、明確な冠動脈保護の基準は無く、欧米と同様の基準で欧米人より体格の小さい日本人でも冠動脈保護を行うことが有効かは不明である。今回、我々はOCEAN-TAVIレジストリーから全666例のデータを使用して、1)大動脈弁輪部から10㎜以内の高さで冠動脈が派生している症例、2)大動脈バルーン拡張時に冠動脈が閉塞した症例、3)バルサルバ洞が浅く、弁尖に高度な石灰化を伴う症例で冠動脈保護を行った。その後、保護群と非保護群で冠動脈閉塞発生率と術後短期予後を検討した。結果、冠動脈保護は全体の14.1%に施行され、発生率は全体の1.5%であった。冠動脈閉塞の多くは、女性の左冠動脈入口部で発症し、保護群で約8%と多く、非保護群では0.5%であった。保護群、非保護群に関わらず冠動脈閉塞を発症した全例で血行再建に成功した。また、2群間での全死亡率および周術期合併症に有意差は認めなかった。

論文9 TAVI後血栓症

近年、TAVI術後の造影CTを用いた研究によりステント生体弁に付着する血栓症の存在が数多く報告されています。今回、われわれは、TAVI施行後に生体弁と連続するValsalva洞に巨大な血栓を認める特異なVasalva血栓症の症例を経験したので報告しました。これまでは、ステント生体弁に付着する血栓症に注目が集まっていましたが、本症例のように、Valsalva洞にも血栓形成のリスクがあることを報告することができました。一般的にステント生体弁の血栓症は、臨床的に問題ないという報告が主流ですが、潜在的な脳梗塞発症のリスクを高めるのではないかという懸念もあります。本邦でも、ステント生体弁の血栓症や、Valsava血栓症に関して、頻度や、病的意義などについて明らかにしていく必要があると考えます。

論文10 心尖部アプローチによる冠動脈閉塞の経験

TAVIにおいて、心尖部アプローチは重要なアクセスルートであるが、大腿動脈アプローチに比べ、侵襲度は高く、特有の合併症の理解が安全な手技に繋がる。TAVI人工弁による冠動脈入口部閉塞は、TAVIの合併症の一つであるが、今回心尖部穿刺部が左冠動脈前下行枝の閉塞に影響を与えた稀な症例を経験した。弁留置後の血行動態が不安定となった場合、冠動脈造影を行い、心尖部の止血糸が影響している可能性を念頭に置く必要がある。

論文11 CT検査から大動脈弁狭窄症の重症度を予測する

冠動脈造影CT検査は狭心症など動脈硬化疾患のスクリーニング検査として一般的に用いられています。本研究では、冠動脈CT検査の際に、非造影による撮影を利用して、大動脈弁周囲に存在する石灰化を定量的に測定することで、大動脈弁狭窄症の心エコーによる重症度評価と強い相関を示すことを証明しました。また、心エコー検査では、重症度判定に悩むような、低左心機能症例や、左室内腔が小さい症例などにおいても、石灰化の定量評価により重症度評価を予測することが可能なため、付加的な診断的意義も示すことができました。汎用されている冠動脈造影CT検査で、冠動脈のスクリーニングを同時に行うことに加えて、大動脈弁周囲の石灰化を評価することで大動脈弁狭窄症の有無を発見して、重症度もある程度予測可能であることは、日常診療において有用であると考えます。