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ナースBLOG Vol.2

いつまでも食べられるお口づくり

2021年07月27日
家に帰ってまた家族と暮らしたい。おいしいものを食べたい。

当院では、心臓血管外科の手術前後の患者様、心筋梗塞や狭心症、不整脈、心不全などの患者様が入院されています。受け持ち看護師の患者様への支援のほか、退院支援看護師を中心とする退院支援、心不全チームや認知症サポートチームなどのチーム活動も盛んで、各看護師が得意分野を持ち、療養支援にあたっています。今回はその中でも、食べることに寄り添う栄養サポートチームの活動についてご紹介します。

栄養サポートチームの目指すもの

私たち栄養サポートチームは昨年より“いつまでも食べられるお口づくり”を目標に歯科衛生士と連携して活動を始めました。私たち人間にとって「食べる」ということは生きていくうえで重要です。しかし現代社会は高齢化が進んでいます。人間は加齢に伴い様々な身体機能が低下しがちです。特に筋力の低下により食事を上手く飲み込めなくなり食事が摂りにくくなってしまう方がいます。患者様は病気により、入院前から食欲が落ちて数日間食事が摂れなくなることがあります。結果、栄養が低下した状態で入院される方も多くみえます。また、しっかりと飲み込めなくなる事で、誤嚥性肺炎になる方も少なくありません。肺炎を治療するためには、食事を中止し点滴で栄養を摂ることがありますが、回復に時間を要すると、唾液分泌の低下や更なる嚥下機能の低下、痩せてしまったことにより義歯が合わないなどさまざまな問題が生じてしまいます。

このような悪循環により食事は思うように進まず、栄養状態がなかなか改善されないことがあります。なかには「本当は家に帰りたい。でも家族に迷惑をかけたくないし・・・」と自宅に帰る事をあきらめる方もみえます。私たち栄養サポートチームは、そんな患者様を減らして自宅で生活ができるように、“いつまでも食べられるお口づくり”に勤めるチームです。週に1回歯科衛生士と一緒に患者様のもとをまわって栄養状態やお口のなかの状態を確認します。そして歯科衛生士から教えていただいた口腔ケアのポイントをスタッフに伝達して、看護師全員が、より良いお口のケアを行えるようにする役割を担っています。

得意分野を活かす療養支援チーム

あるとき、病気により長く人工呼吸器を使用したことで嚥下機能が低下してしまい、胃管カテーテルで栄養を注入していた患者様がいらっしゃいました。患者様には「食事や水分を取りたい。」という強い希望がありました。私たち栄養サポートチームは、患者様を支援し嚥下体操を毎日行いながら嚥下機能の評価をあきらめずに繰り返しました。そして食事を安全に口から食べることができるようになりました患者様は口から食べることができ、表情も明るくなり、「おいしい、おいしい。」と食事を楽しんでいらっしゃいました。私たちは食べることは生きる喜びに繋がることだと、改めて実感しました。

チームだから得られる”気づき”

この患者様の体験をとおして栄養サポートチームは “食事を開始する前に、まずはお口を作る”ということが、どれほど大切か、今までなかった視点に気づくことができるようになりました。また、さらに良い支援をと考えるうちに、自信を持って口腔ケアを行うことができるようなってきました。そして“いつまでも食べられるお口づくり”だけでなく、嚥下のための正しい体勢や嚥下訓練などの方法も考えながら、嚥下障害のある患者様に対して正しい知識と技術を用いて援助できるように取り組んでいます。

「家に帰ってまた家族と暮らしたい。おいしいものを食べたい。」という患者様の願いに添えるように、今後もさまざまな職種で意見を出し合いながら、より良い支援を考え続けます。