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VOL.24

Vol.24:からだにアブラを溜めないために
是非摂ってほしいアブラ オメガ3

からだの表面や内臓周囲についた脂肪の正体は、白色脂肪細胞に蓄えられた“中性脂肪”です(アルカリ性でも酸性でもなく、中性なのでこのように呼びます)。同じ中性脂肪でも、健康診断で引っかかる数値は血液中を流れる中性脂肪。皮下脂肪や内臓脂肪は、血液検査ではなく“体組成計”で測ります。

必須脂肪酸のひとつ、“オメガ3脂肪酸”とは?

最近よく話題に上る、“オメガ3”と呼ばれるアブラは、不飽和多価脂肪酸のひとつで、私たちの食生活でぜひ考慮しなければならない、大変重要な脂肪酸です。なぜかというと、オメガ6とともに、生きていくうえで必要な物質であるにもかかわらず体内で合成できないため、食事から摂取しなければならないから。「必須脂肪酸」と呼ばれています*1。食用調理油由来のα‒リノレン酸と魚介類由来のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)があります。オメガ3脂肪酸は、

  • アレルギー症状の緩和
  • 脂肪燃焼効果
  • 炎症の抑制
  • 血栓の防止
  • 血流の改善
  • コレステロール値の改善
  • 癌細胞の抑制
  • うつ病の改善・予防

などの作用に優れる上、からだに溜まりにくいことから、ぜひ摂ってほしいアブラのひとつです。
食品で多く含まれるのは、何といっても青魚!日本人は昔から魚をたくさん食べてきたおかげで、欧米人に比べて動脈硬化が進展しにくいともいわれています*2。また、製品としては、

  • えごま油
  • 亜麻仁油
  • しそ油

などが代表的な製品です。少し値段が高めですが、普通のスーパーマーケットでも購入できるようになっています。なお、オメガ3のサプリメントも販売されていますが、効果については未だはっきりしたエビデンスが乏しいとされています。

必須脂肪酸のひとつ、オメガ3、毎日しっかり摂るのがお勧め

しかしながら、日本人は圧倒的にオメガ3が不足しているといわれています。オメガ3とオメガ6脂肪酸は体内で合成できない“必須脂肪酸”であり、日々食事から摂取しなければなりません。このうちオメガ6のほうは調理でたくさん使われています(むしろ過度に摂るとアレルギーや炎症を促進しやすい)が、オメガ3については、相当意識して摂取することが必要です。オメガ3は、からだに溜まりにくい構造であり、多く摂っても太ることはありません。厚生労働省は、男女別、年代別に1日に必要なオメガ3脂肪酸の摂取量を定めています*2。脳の神経細胞の構築や維持に重要であり、糖尿病・乳癌・大腸癌・前立腺癌などのリスク低減に有効、という研究結果があることから、50~60代の男女で最も多い推奨摂取量に設定されているようです。どの方も、1日に大さじ1-2杯はとっていただきたいものです。なお、心血管系のリスクを減らす効果については、未だ賛否が分かれた状態です*3*4

難点は「熱に弱い」こと。生でいただくことが重要です。ぜひお試しいただきたいのが、こちらです。まろやかになったり、香ばしくなったり、ちょっと違った味わいが楽しめますよ。
なお、脂肪酸には各種あり、表1にまとめています。詳しくは次項をご参照ください。

  • ドレッシングに混ぜて
  • フルーツやヨーグルトにかけて
  • 味噌汁や炒め物にかけて
  • 納豆やとろろかけご飯にも

もっと知りたい方へ

上手に使い分けたい、脂肪酸ファミリー

からだの細胞や組織の形成、ビタミンやホルモンの適正なはたらき、神経系の活動、そしてエネルギー源など、わたしたちが生きるために欠かせない脂質。今回はその中の“脂肪酸”について注目しています。

中性脂肪の構成成分、“脂肪酸”

図1のように、中性脂肪は“脂肪細胞”という細胞の中の、“油滴”の中に溜まっています。中性脂肪はグリセロール基という構造に、脂肪酸という細長い分子が3個つながり1つの分子を形成しています。脂肪酸には多くの種類があり、グリセロール基につく脂肪酸の組み合わせで中性脂肪の種類が変わります。体内で実際にさまざまなはたらきをするのが、この脂肪酸です。脂肪酸は炭素(C)の原子が鎖状につながった分子で、その鎖の一端に酸の性質を示すカルボキシル基(-COOH)と呼ばれる構造を持っているのが特徴です。脂肪酸は、その分子構造から“飽和脂肪酸”と“不飽和脂肪酸”に分類されます。さらに、不飽和脂肪酸は分子構造によっていくつかの種類があります(表1にまとめています)。

体につきにくいアブラ、そのわけは?

簡単に言うと、常温で固体のアブラ(脂)は飽和脂肪酸、液体のアブラ(油)は不飽和脂肪酸です。

図2に、一部の脂肪酸の分類を示しました。炭素(C)がすべて1本の結合でつながっているのが飽和脂肪酸、2本の結合が含まれているのが不飽和脂肪酸。 飽和脂肪酸は二重結合がないので、ほぼ直線的な分子であり、常温で固まりやすい性質があります。一方、“オメガいくつ”という呼び方は不飽和脂肪酸に用いられ、最初の“二重結合”が端っこから数えて何番目に来るかを表しています。二重結合の場所では分子は屈曲するため、二重結合が多いほど、分子はくるくると立体的になり、固まりにくくなります(液状)。つまり、体脂肪として溜まりにくくなる、というわけです。同じ1g=9kcalでも、オメガ6やオメガ9に比べてオメガ3脂肪酸は、3番目に最初の二重結合があり、しかも複数の二重結合を有しているため、体内でも皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積しにくいアブラです。前項で、オメガ3の効用と上手な使い方をお示ししました。ぜひお試しください。

オメガ6は使いやすいアブラですが、アレルギー促進や炎症促進、血栓促進作用があります。オメガ6が過多になるとアレルギー症状の悪化や不調の原因となります。オメガ3とオメガ6との割合は1:3くらいが理想的と言われますが、日本人はオメガ3の方が不足しがちで、現在は1:10くらいになっているという説も。

なお、ここで示ししている脂肪酸の構造は、すべて“シス型”と呼ばれるもの。同じ分子式でも、“トランス型”と呼ばれる脂肪酸(トランス脂肪酸)が存在します。トランス脂肪酸には体内での悪影響が知られており、海外では規制している国も少なくありません。トランス脂肪酸については、またの機会に取り上げます。

アブラの中の、“脂肪酸”ファミリーだけでもたくさんあり、それぞれ性質が異なることがわかります。健康志向の強い人ほど、「この油がよい」とされると、特定の油だけを多く摂りがちになります。しかし、偏るとかえって健康を損ねるリスクもあります。ブームに流されず、バランスのよい食事を心がけるようにしましょう。

  • *1

    農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/index.html

  • *2

    日本人の食事摂取基準(2015年版) http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042631.pdf

  • *3

    Iso, et al. Intake of fish and n3 fatty acids and risk of coronary heart disease among Japanese: the Japan Public Health Center-Based (JPHC) Study Cohort I. Circulation. 2006. 17;113(2):195-202.

  • *4

    Yamagishi et al. Fish, omega-3 polyunsaturated fatty acids, and mortality from cardiovascular diseases in a nationwide community-based cohort of Japanese men and women the JACC (Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk) Study. J Am Coll Cardiol. 2008. 16;52(12):988-96.