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VOL.46

Vol.46:賢く摂ろう、塩分
からだに不可欠、でも病のもと・・・?

世間は新型コロナウイルスの騒ぎで、イベントは軒並み中止、外食の機会が減ったというひともいるでしょう。そんな中でこそ、食事は美味しくいただきたいもの。とはいえ、塩分摂りすぎ!とおうちの方やかかりつけ医に言われる方、増えています。今回は、塩分摂り過ぎがなぜいけないのか?考えてみます。

国民挙げての、食塩摂取適正化の目標は

日本高血圧学会は、2019年10月に「日本高血圧学会減塩推進東京宣言–JSH減塩東京宣言-」を発表し、その中で「6gを目指した6つの戦略の実行」を宣言しました*1。その6つの戦略とは、以下のとおりです(図1)。

  1. 1

    食塩の過剰摂取による弊害と減塩の必要性について啓発に努めます。

  2. 2

    個人や集団における食塩摂取量の評価を推奨し、減塩手法の提示を支援します。

  3. 3

    こどもの食育の一環としての減塩(塩育)の推進に努めます。

  4. 4

    外食・中食・給食の減塩化を支援します。

  5. 5

    企業に対し、減塩食品の開発、普及を働きかけます。

  6. 6

    行政に対し、減塩推進に向けた取り組みを働きかけます。

学会として、個人の血圧の管理だけでなく、企業や行政への働きかけを通じて、広く社会や国を挙げて減塩をめざそうという決意の表れです。

また厚生労働省は、「日本人の食事摂取基準(2020)」の中で、一般人の食塩摂取の目標量を男性7.5g/日、女性6.5g/日とし、国民レベルでの減塩の推進を提唱しています。さらに2018年、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法)が成立しました*2。心臓血管病を予防するために減塩を推奨することはもはや国の重要課題の一つとして位置づけられています。

日本人の塩分摂取事情とは

表1に、高血圧学会が示した最新の食塩摂取目標値を示しました。通常の男性は7.5g、女性は6.5gです。さらに高血圧患者、腎臓病患者に対しては6gまでと制限しています*1,3,4

一方図2は、「平成30年国民健康・栄養調査」に掲載された,日本人の1日あたり食塩摂取量を表しています*5。中年以降特に摂取量が増えていくのは、味覚などの衰えによるものという説やありますが、いずれにせよ、男性ではいずれの年代でも目標の1日8gを大幅には超えていますね。

次項では、食塩過剰摂取がなぜいけないか、からだにどのような影響を及ぼすのかを考えてみましょう。

もっと知りたい方へ

塩分を摂りすぎるとどうなるか?

食塩の過剰摂取は、高血圧の発症、重症化はもとより脳卒中、心臓病、腎臓病などの要因となり、健康寿命を脅かします。

過剰摂取がもたらすもの
一時的な塩分過多

宴会などで食べすぎたあと、一時的に塩分過多の状態になる場合があります。血液中の塩分が増えると、体内の浸透圧を一定に保つため、血液に多量の水分が取り込まれます。血液量が増えて血管の壁を圧迫するために、血圧が上昇します。またナトリウムを運ぶためにカリウムを利用するため、塩分の摂取量が多すぎるとカリウムが不足し、のどが渇くようになります。水分をからだに溜め込むため、むくみがでます。こうした変化は、翌日塩分を控え、野菜などを食べてカリウム不足を補えば、改善します。しかし、恒常的に塩分過多な状態が続くと、体内のミネラルのバランス、ホルモンバランスや自律神経のバランスを崩します。

長期的な塩分過多

過剰食塩摂取は血小板凝集能の悪化につながり、脳梗塞や心筋梗塞が増加する可能性があります。また交感神経活性を刺激し、結果的に高血圧に繋がります。またナトリウムやカリウムなどのミネラルのバランスが大きく崩れるため、細胞内の電気的なバランスが乱れ、不整脈の原因になります。さらにレニン・アンギオテンシン系や副腎皮質などのホルモン活性が亢進し、ゆくゆくはこれらの臓器障害も引き起こすといわれています。このように、体内の凝固線溶系、自律神経、ミネラルやホルモンの自律神経系のバランスが崩壊し、最終的には臓器障害にまで至ることが知られています*6
心臓血管系だけではありません。食塩摂取量が多い男性は、少ない男性に比べ胃がんを発症するリスクが約2.2倍になるという研究結果もあります*7

日本人のデータから・・・循環器疾患への影響は

図3は、尿中のナトリウム/カリウム比を国別、性別、年代別に示しています。尿中の濃度が低いことは、ナトリウム摂取量の多さとカリウム摂取の少なさに関連し、イギリスやアメリカに比べ、日本では男女ともこの比率が高いことがわかります*8,9

図4を見ると、この比率が高い人ほど循環器疾患や脳卒中の死亡リスクが高まることがわかります*8,10

一方図5では、減塩日本食パターンが強いほど、循環器疾患や脳卒中の死亡リスクが下げられることを示しています*8,11)。
以上のようなエビデンスから、国や学会は食塩の摂取に関して厳格な基準や目標を示しています。

ただし、闇雲に塩分を毛嫌いすることにより、極端な食事制限に走ったり、多量の汗をかいた後にも塩分を補充しないでいたりしては、逆効果です。自分や家族の健康を守り健やかに寿命を全うするために、1人1人が正しい食生活に向けて考える機会を持ちたいものです。

  • *1

    日本高血圧学会減塩推進東京宣言–JSH減塩東京宣言-
    https://www.jpnsh.jp/data/declaration_tokyo2019.pdf

  • *2

    厚生労働省.健康局長健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法の施行について(施行通知).令和元年11月1日.
    https://www.mhlw.go.jp/content/000571496.pdf

  • *3

    慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版

  • *4

    慢性透析患者の食事療法基準

  • *5

    厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査結果の概要」

  • *6

    伊藤貞嘉.日本医師会雑誌.第142巻・特別号(1)「高血圧診療のすべて」、Ⅳ.臓器障害の病態と臓器連関.2013.

  • *7

    Tsugane S, et al. Br J Cancer. 2004. Jan 12;90(1):128-34.

  • *8

    岡村智教.循環器疾患の予防の観点から、日本人の食事を考える.
    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000015815.pdf

  • *9

    Stamler J, et al. The INTERMAP Study. J Hum Hypertens, 2003; 17: 726.

  • *10

    岡山明、他.米国心臓協会疫学部会(サンディエゴ), 2012.

  • *11

    Nakamura Y, et al. Br J Nutr.2009; 101: 1696-1705.