おしゃべりハート

MIC

2007.12.11

心臓外科医でスーパーバイザーの米田先生とおしゃべりします。(3)
「大動脈」



スーパーバイザー兼コンサルタント心臓外科医 米田 正始
スーパーバイザー兼コンサルタント心臓外科医
米田 正始
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―― おしゃべりハート。それでは、今日も、心臓外科でスーパーバイザーの米田先生にお話を伺ってまいります。今週もよろしくお願いします。

米田 お願いします。

―― 今日は、大動脈のお話を伺いたいと思いますが、大動脈というと、心臓にくっついている太い血管ですよね。大人になるとすごく太いと伺いますけれども、どれぐらいあるものなんですか。

米田 もちろん個人差はありますのでかなり幅はありますけれども、2cm半か3cm、結構太いですね。

―― 動脈ですから、心臓が全身にこれから送り出す血液をぱあっと出す、その口になるわけですよね。

米田 そうです。もうパイプみたいな形をしています。

―― 一本。

米田 一本です。もちろん枝分かれしていってどんどん細くなっていきますけれども、おなかぐらいまでいってもまだ結構太いですね。

―― どの辺までが「大動脈」と呼ばれる部分になるわけですか。

米田 大体おへその高さぐらいまでが大動脈で、そこで左右に分かれて両足のそれぞれの方へ行きますので、その左右に分かれるまでを大動脈と呼んでいます。

―― そこまでは太いわけなんですね。そんな大事な大動脈も病気になるわけですね。どういう病気があるんですか。

米田 代表的なものの一つとして大動脈乖離(かいり)という、大動脈の壁が裂けていく病気ですね。

―― 血管の壁が破れちゃう。

米田 裂けた後に破れることもよくあります。

―― 裂けるだけでは破れたことにはならない。

米田 もう破れかけていると言った方がいい状態ですね。外側の薄い皮一枚で何とかもっているというような状態です。

―― 血管というのは何層かに構造ができているわけなんですね。その外側の薄い皮だけになっちゃう。

米田 もうまさに首の皮一枚でもっているというような感じですね。

―― じゃ、すぐにその動脈の中を通っている血液がばっと漏れちゃうというわけではない。

米田 はい。まもなく破れるということももちろんあります。乖離が起こって、もう何時間の間に破れるということもしばしばありますけれども。

―― 破れたら大変ですよね。

米田 破れたらもう、まず即死かそれに近い形になりますね。

―― だって、破れちゃったら全身にはうまいこと血液が流れないですからね。

米田 行きませんし、破れたところからの血液で心臓が圧迫されると心臓も一緒にとまりますので、これは大変なんですね。

―― もうほぼ即死というケースが多いのが大動脈乖離。

米田 以前、俳優の石原裕次郎さんとか、最近では加藤茶さんらが急性の大動脈乖離になられて、そのままでは間もなく死んでしまうという状態で緊急手術を受けられていますね。

―― 破れるまではいかなかったわけですね。

米田 そうです。破れる直前のところを、手術でその大動脈が裂けたところを人工血管できれいに置き換えて、それで元気になられたわけです。

―― 「あっ、大動脈乖離だ」という自覚症状というのはあるんですか。

米田 患者さんのお話をお聞きしますと、「こんな恐ろしい痛みは人生で初めてだ」というぐらい痛いんですね。それは、どこが裂けているかによって、胸が痛い、あるいは背中が痛い、多少場所は個人差があるんですけれども、

―― 裂けたところが痛いわけですか。

米田 そうです。そういう痛みが、例えば胸とか、背中とか肩の方へ響くような形で伝わっていくんですね。それで微妙に違いはあるんですけれども、しかし、言えることは、ものすごく痛いと。こんな今まで経験したことがないような痛みだと。例えば、ある患者さんの言葉をかりれば、「背中をナイフで刺されたような感じがした」というぐらいの痛みですね。そういうのがあれば、仮にそれが大動脈乖離ではなくても全然恥ずかしくないので、まず救急車ででも来ていただくということがいいと思います。

―― 大動脈乖離、聞くだけで恐くなりますけれども、どうしてそんなことになってしまうんですか。

米田 これはいろいろな可能性があるんですけれども、大動脈の壁が弱くなってくる。これは動脈硬化とか、年齢的なものとか、高血圧とか、いろいろなことでなり得るんですけれども、とにかく大動脈の壁が弱くなる。大動脈の壁が何層かになっているんですけれども、特にその真ん中あたりが傷んでくるわけです。

―― 一番外側、一番内側は何でもなくても。

米田 内側も多いです。内側、真ん中あたりが裂けてくる、あるいは弱くなってくる。そうなると、そのままにしておくと、もうおよそ2日間で半分ぐらいの方が急性乖離で亡くなるんですね。1週間もたてば9割近い方が亡くなられますので、これは放っておけないんですね。

―― それはやっぱり裂けちゃうところまでいっちゃうということなんですか。

米田 裂けて、そして破裂するか、心臓がとまってしまうかですね。

―― 痛くなったら早めに手術を受けること。

米田 まず大動脈乖離かどうかを診断する必要がありますが、今診断は比較的迅速にできます。いろいろな方法がありますけれども、例えばCTスキャンという、別に痛くない検査で大動脈が乖離しているかどうかというのはすぐわかります。

―― CTスキャンというと、ちょっと大げさなレントゲンですよね。

米田 そうですね。点滴だけ受けながら、横になっているだけで写真はすぐ撮れますので、それで乖離があれば、すぐ手術をする必要があるわけですけれども、大動脈乖離になれたチームで行えば、ほとんどの場合助けることができるんです。手術しないとほとんどの人が亡くなりますから、ある意味、これぐらい治療を受け甲斐があるといいますか、これほど意味のある治療は少ないというぐらいよく効くわけですね。

―― 先生のお話では相当痛いらしいですから、なかなか放っておく人は少ないかと思いますけれども。

米田 その意味では患者さんもほとんど疑う余地がなく、どちらかというと、患者さんのほうから何とかしてくださいと言って来られるんですね。むしろ大動脈乖離以上に違った意味で注意が必要なのは、大動脈自体がどんどん大きくなるような、いわゆる大動脈瘤、瘤のように大きくなるタイプ。これは逆にほとんど痛みがないんです。それだけに注意が必要なんですね。というのは、ある程度以上大きくなると、やはり破裂します。破裂してから病院に来て、間に合うこともありますけれども、どちらかというと、病院に来られるころにはほとんど命を落としておられるというケースが多いからです。

―― 大動脈乖離の場合には、破裂してしまったらもうほとんど即死に近いというお話でしたけれども、大動脈瘤でも破裂をすればすぐに死んでしまう。

米田 これは非常に危ないですね。例えばおなかの大動脈瘤が背中側に破れて、骨との間で何とかかろうじてもちこたえて、その状態で生きて来られて助けたということは何度もありますけれども。

―― 場所によって命を落とすスピードが変わるわけなんですね。

米田 そうです。それが、守ってくれるものがない場所で破れると、これはやはり即死になりますので。

―― じゃ、運良く何とかもちこたえているならば、本当に早めに手術をしてということなんですね。

米田 ただ、そういう大動脈瘤の場合は、痛みがまずほとんどありませんので、せいぜい胸の大動脈瘤で声がかすれてくるとかぐらいの症状しかないんですね。

―― 破裂すれば、さすがに症状はあるんですね。

米田 すごい症状はありますけれども、これはちょっと手遅れになる場合が多いですね。これは、会社とかいろいろな健康診断のレントゲンででもかなりはわかりますし、大動脈のところがぽこっと出たりしているのが見えます。それから、おなかの大動脈瘤の場合は、少しなれた先生がおなかを触れば、触るだけですぐにわかりますので、それで、これはちょっとおかしいと思えばエコー、いわゆる超音波をとるとか、CTのスキャンの写真ではっきりとあるかないかわかります。

―― 逆に言うと、それぐらい大きなこぶができるわけですね。

米田 そうです。例えば、大動脈といってもおなかとなると大分細くなりますので、普通2cmもないようなおなかの細い血管がこぶになると、8cmとか9cmとかになって来られる方が結構あるんですね。そのサイズになると、もう明日破れてもおかしくない。大体おなかの場合、5cmになれば手術をします。5cmを超えると急に破れる可能性が高くなるんですね。

―― 血管が膨らんでこぶになっているわけですよね。

米田 そうです。胸の場合は、一応目安としては6cmですね。6cmを超えればやはり急に破れやすくなりますので、それも手術をして治すわけですね。

―― 健康診断は大事ですね。

米田 健康診断と、あと先ほどの急性大動脈乖離の方は、強い痛みがあれば無理せずにすぐ相談していただくということが命を救います。

―― 裂け始めてから破裂までの猶予というのは人によるんでしょうね。

米田 これはいろいろな表現の仕方がありますけれども、大動脈乖離の場合は、1時間に1%亡くなるんですね。これはすごいスピードなんです。2日で大体半分亡くなりますから。したがって、ちょっとでも早い方がいいわけですね。

―― 亡くなる時というのは、やはり破裂して。

米田 最後は破裂して、あるいは破裂した一部の血液が心臓の周りへ回って心臓を圧迫して、結果的に心臓がとまって亡くなられるんです。

―― それは時間を追うごとにどんどん。

米田 もう、ぐんぐん増えていきます。1時間に1%というのはものすごい数ですから。ただ、手術に間に合えばほとんどの人を助けることができますので、それだけに早く診断をつけたいわけですね。診断をつけてもつけなくても生きる可能性が余り変わらないという病気ではないんですね。

―― 手術をすれば大動脈乖離も動脈瘤も成功率は高い手術になるわけですね。

米田 年齢とか体力、ほかの病気とかにもよりますけれども、80歳台まで含めた全体的に言えば90%以上助けることができますので、それは相談していただく意味は十分あると思います。

―― というぐらい黒白はっきりするわけですので、またぜひ覚えておいていただきたいと思います。今日は大動脈のお話、恐い病気は急性大動脈乖離、そして動脈瘤のお話で、手術を早めに受けることによってかなり助かる確率は高いということですので、ぜひ皆さんも覚えておいていただきたいと思います。米田先生、どうもありがとうございました。

米田 ありがとうございました。