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VOL.03

Vol.03:「健康寿命」ってご存知ですか?

平均寿命は延びたけど・・・

ご存知のとおり、日本の平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳と、世界有数の長寿国となっています。しかし!すべての国民が健康で長寿を全うしているかという観点で考えると、手放しで喜んではいられない現実があります。

「健康寿命」とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間(厚生労働省「健康日本21」)」で、 WHOが2000年に初めて提唱した概念です。世界の306の国と地域で、平均寿命と健康寿命を比較した大規模な調査の結果が、2015年にLancetという著名な医学雑誌に発表されました*1。この中で、 以下のように述べられています。

  • 世界188カ国の2013年の「健康寿命」を調べたところ、日本が1位だった
  • 日本の健康寿命は男性が71.11歳、女性が75.56歳
  • 世界では1990年~2013年に、平均寿命が65歳から71歳、健康寿命も57歳から62歳に延長、これには感染症対策の進行が関与している

このように、日本は「平均寿命」だけでなく「健康寿命」までも世界をリードする存在と言えます。しかしながら、下図を見てください。この図は、日本人の平均寿命と平均健康寿命の差を表しています。

「健康的でない」余命が、男性9年、女性12年も!

健康に何らかの問題を抱えながら過ごす時間が、実に男性9年、女性12年あるということになります。健康寿命の差は、引退後ではなく、働き盛りの時代の日常生活や食生活の差によって決まると言われています。働く世代の方々で、以下に示したことに心当たりがあるようなら、要注意!将来、健康的でない寿命を生きることになってしまうかもしれません。この問題は決して高齢者だけの問題ではなく、若い世代にも関わる国民的な課題であり、国を挙げて考えていかなければならないのです。

  • 野菜・果物をほとんど食べない
  • 食塩量が多い(朝昼晩外食の方は特に注意!)
  • スイーツを食べる回数が多い
  • 飲む機会が多い
  • ヘビースモーカー
  • 歩くのが面倒で、タクシー利用が多い

もっと知りたい方へ

健康寿命を延ばす取り組み
健康寿命とは・・・?
表2:国内の健康寿命ランキング
健康寿命とは、読んで字のごとく「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。2015年にLancet紙に掲載された論文1)によれば、日本の健康寿命は世界の平均に比べ約9歳も高いとのこと。ちなみに、国内では愛知県が男性の第1位、女性の第3位と、健闘しています(表2) 。

また、この論文は、306の国と地域における「健康を損なう10大要因」の調査結果も細かく掲載しています。

日本における健康を損なう10大要因
  1. 1.背部や頚部の疼痛
  2. 2.脳卒中
  3. 3.虚血性心疾患
  4. 4.下気道感染
  5. 5.肺がん
  6. 6.その他の筋骨格障害
  7. 7.糖尿病
  8. 8.感覚器の障害
  9. 9.自傷
  10. 10.抑うつ

注意していただきたいのは、これらはあくまで「死因」ではなく、「元気でいられなくなる背景」であり、「健康寿命を損ねる要因」であること。発展途上国、新興国と対照的に、日本では表2のようにほとんどが生活習慣病もしくは内臓以外の要因となっています。裏を返せば、食事やライフスタイルを見直すことにより、ある程度リスクが減る可能性があるとも考えられます。

健康寿命をまっとうするための、トータルケアの重要性

心臓はいうまでもなく、健康寿命をよくするためのカギとなる臓器のひとつです。しかし、心臓の病気は単に心臓というパーツを修理するだけでは良くなりません。心臓の病気のカゲには動脈硬化、糖尿病、脂質異常、高血圧、腎臓病、貧血、代謝異常など、様々な異常が隠れていることがあります。これらは自律神経系、免疫系など全身の調節機構とも深い関連があり、心疾患が重症化・長期化するほど、全身への影響が大きくなると言われています。逆にからだのどこかのトラブルが、心臓にダメージを与えることも十分考えられます。

病態の複雑化した高齢化社会では、医師、看護師だけでなく薬剤師、栄養士、理学療法士などさまざまなスペシャリストがチームを組んで心疾患の治療介入に当たらなければなりません。そして、そのチームの一員には、患者さん本人が含まれているのです。

包括的治療介入の選択肢のひとつ、心臓リハビリテーション

「包括的心臓リハビリテーション」は、心臓血管系の病気にかかった患者さんを対象とし、体力と自信の回復、快適で質の高い家庭生活や社会生活への復帰、再発や再入院の防止などを目標とした治療プログラムです。適度な運動は、健康増進のためにはもちろん、心臓血管疾患を持つ患者さんにも、有益な効果をもたらすと言われています。手術が心臓や血管の「修理」だとすれば、心臓リハビリテーションは「メンテナンス」。心疾患によるさまざまな悪影響を食い止め、全身状態を改善させる治療のひとつとして、世界的に推奨されています。

「包括的心臓リハビリテーション」とは、心臓血管系の病気にかかった患者さんを対象とし、体力と自信の回復、快適で質の高い家庭生活や社会生活への復帰、再発や再入院の防止などを目標とした治療プログラムです。適度な運動は健康増進のためにはもちろん、心臓血管疾患を持つ患者さんにも、有益な効果をもたらすと言われています。手術が心臓や血管の「修理」だとすれば、心臓リハビリテーションは「メンテナンス」。心疾患によるさまざまな悪影響を食い止め、全身状態を改善させる治療のひとつとして、世界的に実証されています。

  • *1

    Murray, et al. Global, regional, and national disability-adjusted life years (DALYs) for 306 diseases and injuries and healthy life expectancy (HALE) for 188 countries, 1990–2013: quantifying the epidemiological transition. Lancet. Vol.386 (10009); 2145–2191, 2015 (Online August 27, 2015 http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(15)61340-X)